間取り図という思想

 いつも思うのですが、家の間取り図には、つくる人の思想が一番表れていると思います。思想なんて全然考えてないようでも、できあがった間取り図を見ると、その人なりの思想が見えてくるのです。たとえば、この家は階段がリビングにあるので、玄関から2階の子供室にいくには、必ずリビングを通ることになる。つまり子供は親の目にたえず触れる設計になっているなと。また別の家では、屋根付きの洗濯物干場や、キッチンのそばにちょっとした作業ができるカウンターテーブルがあり、家での家事を中心に家を設計しているななど…。

 自分で設計事務所を始めて今年で35年になります。今、独立して最初に設計した家の外壁の改修の相談を受けていて、当時は手描きだった図面をパソコンで描き直しています。35年前につくった間取り図からは、何か新しい提案をしてあげようという意気込みのようなものが感じられ、まだ若かった自分の設計に対する思いが、この間取り図には結構詰まっているなあと、当時を思い出しながら、懐かしがりながらパソコンに向かっています…。

2022年10月17日