ティファニーで朝食を
最近読んだ本で一番面白かったのは、トルーマン・カポーティ作「ティファニーで朝食を」(1958年)です。これは掛け値なしに面白かった! オードリー・ヘプバーン主演の同名映画が有名ですが、原作を読むのは初めてで、映画と小説とではずいぶん印象が違いました。映画では、主人公ホリー・ゴライトリー役のオードリー・ヘプバーンありきの恋物語(これはこれで素敵ですが…)になっていて、ラストもハッピーエンド(だと思う…)。一方原作では、主人公の複雑な過去や内省が丁寧に描かれていて単なる恋物語で終りません。ラストも決してハッピーエンドではなく、その後の主人公の行方を暗示するものとなっています。語り手である「僕」も、映画ではスーツを着たタフガイですが、小説ではなかなか芽の出ない売れない作家になっています。特に、たびたび登場するホリーの飼っている猫が、ホリー自身の生き方を暗示する重要なモチーフとなっているところが、この小説に深みを与えています。どちらがよかったか? もちろん個人的には小説の方がずっと面白かったです。